介護における多職種協働の問題点と対策

介護現場には介護福祉士など介助を担当する職員をはじめ、看護師や行動療法士など、様々な職種が集まっています。利用者に充実した介護サービスを届けるためには、多職種同士が連携して職務を遂行しなければなりません。しかし、他の職種の業務内容につき理解が深まらないと、相互の協力が難しいという問題点があります。どの職種のスタッフも専門性が高く、自分の仕事にプライドを持って業務をこなしているので、自分の仕事の重要性ばかり主張することも少なくありません。多職種の職員が関わる介護現場では、各々がバラバラに仕事をすると業務が重複したり相反する指導をしたりして、利用者が混乱することになりかねません。こうした事態を避けるため、実効性の高い多職種協働が必要です。

多職種協働には、それぞれの職種が同一の目標を持ち、相互に矛盾や重複がないかチェックしながら業務に当たる姿勢が欠かせません。多職種が共通目標を共有するためには、相互のコミュニケーションが不可欠です。介護業界深刻な人手不足もあり、多忙を極める日頃の業務の中では充実した意思疎通を図ることがなかなか困難でしょう。そのような時にこそ、多業種のスタッフが集まり意見交換できるケアカンファレンスなどの場が求められます。ケアカンファレンスで異業種の職員と交流すれば、それぞれの立場や特殊性を理解できて、連携しやすくなります。ケアカンファレンスでは、1人1人の利用者の心身の健康状態や関わり方について情報交換が可能になり、業務の重複や矛盾を避けられるのです。

意識的に行いたい多職種のコミュニケーション

多職種協働では、積極的に他の職種の人とコミュニケーションをとることが必要です。なぜなら、介護の現場ではさまざまな職種の人が1人の利用者を担当します。たとえば、利用者の生活全般を担当する介護職と、利用者の健康をチェックする看護師の場合、一見すると違う作業内容だと感じる人もいるでしょう。ですが、利用者の普段の状態を介護職が報告していないと、看護師は体調の異変に気づきにくくなります。また、健康状態について詳しく把握していなければ、作業療法士はどのようなプログラムを組んだらいいのか分かりませんし、福祉用具事業所はどのようなアイテムが利用者の助けになるのかその判断に困ります。各職種が1つにならなくては、利用者に対して満足のいくサービスが提供できないのです。

多職種協働で他の職種の人と、積極的にコミュニケーションをとるには、できるだけ普段から声かけをすることです。必要なときにだけ連絡をとったり月に1度に報告するだけでは、なかなかチームワークはとれません。些細なことでもすぐに報告したり週に何度か会うようにすると、連携がとりやすくなります。そして、このときにはさりげなく労りの言葉をかけたり、世間話を入れたりるのもコツです。事務的な報告だけでは、堅苦しくなりがちです。ですが、何気ない会話をすることで互いに親近感を感じられ、相談などもしやすくなります。また、相手の意見が間違っていると感じた場合には、必ず客観的なデータを提示してからにしましょう。指摘だけすると、ついつい感情的になって交流がうまくいかない可能性があります。